ただそっと“私はここに居る”と示したい
Kさん
2025.06.21
──おぼろづきよを知ったきっかけは何ですか?
おぼろづきよのことはオープン時に新聞で見て知りました。本が好きだったので、どんなものが置いてあるのかなと興味を持ちました。 自分で探すと興味のある本が偏ってくるので、自分では見つけられない良いものと出会えるかもしれないと思いました。
──どうして本棚オーナーになろうと思ったのですか?
「自己表現の場として」とHPに書いてあるのを見て、“こんなことを考えている私が居ます”とひっそりとでも存在を示せるのではないかと思いました。 当時はTwitterがXに変わって荒れてきていて、インスタで読書アカウントをやり始めたけど続かなくて、SNSをやめたいと考えていました。ネットで匿名でつながることの限界も感じていました。 一箱本棚を持ってオススメの本を置くことは、その代わりになるのではないかという気持ちがありました。
自分が生きづらさを感じていた中で、同じ悩みを抱えた人とつながりたい気持ちがありました。この本棚が自助グループ的に機能すると良いなという思いもありました。 それで私が今までに読んで役に立ったり、癒しにつながったりした本を中心に置いています。
知識は身を助けるというか、知識があればどん底でも踏み外さずに何とか耐えられると思っています。物語に癒やされることもあります。 本の良さは、いつでも一人で読めることです。 人に相談するのは勇気がいるし、思わぬ反応が返ってきて傷ついたり、関係悪化の可能性があります。 でも本を持っていれば、いつどこでも自分を助ける言葉を得ることができます。情けない自分と似た人物が葛藤奮闘している物語に励まされたり勇気をもらえたりします。
──本棚オーナーに興味を持ってから実際に申し込むまでどれくらいの期間がありましたか?
移転前の場所でのスタートでしたが、おぼろづきよの存在を知ってから実際に訪れるまでに半年、そこから申し込むまでに半年くらいです。
──初めて本棚に本を並べた時どんな気持ちでしたか?
置く本については、館長の松田さんに事前に相談させていただいていました。どんな方に手にとっていただきたいかのイメージとともに、どの辺りの棚にするか、どんなふうに並べるかも一緒に考えていただきました。 気持ちとしては、受け入れてもらえるのか怖い気持ちが5割、ドキドキ緊張する気持ちが2割、わくわく期待する気持ちが3割という感じでした。
──本棚オーナーをやってみての感想を教えてください。
イベントなどにはなかなか参加できなくて、実際に顔を合わせてお話をしたことのある本棚オーナーさんは少ないです。でも、他のオーナーさんの本棚に、自分が読んだことのある本や気になっていた本が置いてあると嬉しくなります。
私の本棚の中ではケアやジェンダーについての本を手にとってくださった方が多く、本棚オーナーのチャットの中で話題にしていただいたことがありました。お互いに自分のことを語るわけではないですが、本の内容を共感し合うことで、“しんどいのは私だけではないのだ”と心の支えになりました。本を読んでくださって、感想のメモをいただけることも楽しみになっています。 同じ地域に暮らす人が同じことに関心を持っているという事実が、心強く感じています。
──これから、本棚オーナーをやってみたいと思っている方に一言お願いします。
私は誰かにアピールしたいわけではありません。それでも誰かに存在を認められたいという気持ちはなくなりません。
今の世の中は評価やジャッジの目に晒されやすいです。「あなたは何者ですか?」「何ができますか?」と問われ続けるのはしんどいです。 ここは役割とか立場とかポジションとか、そういうのと関係なくいられる場所になりうる可能性があります。
ただそっと“私はここに居る”と示したい。 一箱本棚をやることでその気持ちを多少ですが満たせています。
